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【 タイムトラベラー真澄 桜小路編 】
written by りう
注意:このお話はお笑いです。
関西系お笑いの苦手な方は読まないでください。
その日真澄は影である聖を伊豆の別荘に呼び出していた。
当然彼には裏の仕事をしてもらうためである。
「今度の仕事はこれだ」
真澄は黄緑色のポケットファイルを向かいのソファーに座る聖の目の前にバサリと置いた。
昨日、会議の最中にまたもやせこせこ作成していたプレゼン(依頼主:大都芸能社長速水真澄)である。
聖がそのタイトルを見ると、
『桜小路&マヤ引き離し計画』
と書いてあった。
(真澄様・・・貴方のネーミングは桜小路さんのファッションセンスに匹敵いたします・・・)
聖は少々白目になりながらも、ページを一枚めくる。
**シナリオ1**
―桜小路をダンプで撥ね殺す。
(以下省略)
「・・・真澄様・・無理でございます。撥ね殺すのは容易ですが、外国へでも密入国して、その後某国人の戸籍を買い再びコンテナで日本へ入国すれば良いわけですし。しかし、これでは紅天女の試演がめちゃくちゃになってしまいます」
「なぜ、突然こんなものをご計画されたのですか?」
「実はな、聖・・俺はタイムトラベル能力を得たのだよ」
「は?タイムトラベル、ですか?」
「本誌連載での婚約パーティの後だ」
「そこで、見てしまったんだよ。桜小路とマヤのドアップキスシーンをな!連載番号でいうなら第327回だ」
「許せるか?聖。俺ですら1ページしかなかったのに、1ページ+1/3ページだぞ」
「その上、俺なんかソフトタッチチューなのに、奴はグッリョリチューだったんだよ!」
「舌いれたか?桜小路。いや絶対入れてる!気持ち悪いってんだよ!」
「はぁ・・」
「お前も許せない、そうだろ!?さらにな、その次の号も回想シーンで出てくるんだよ。さらにさらに、手にキスするのが2回だ!」
「これが抹殺理由に値しなくてどうするんだ」
「俺も何とかしようと、試演の舞台を変更したりして何とか頑張ったのだが、そうしたら今度は42巻が桜祭りになってしまって、
相変わらずのセンスのイルカペンダントなんぞ出てきやがった上に、マヤとデートだぞ!?
リーサルウエポン(注:紫のバラ)で何とかしようと思ったら余計裏目に出て、俺より先に飛び込みやがったのだよ。」
「もう殺すしかないだろ」
「ですが・・・先ほども申しましたが、紅天女の試演がございますので、やはりこれは無理でございます」
「そうか・・・ではシナリオ2でいこう」
**シナリオ2**
―桜小路を誘拐し、頭を殴りまくって記憶喪失。
(以下省略)
「真澄様・・・これも無理かと・・・誘拐・殴打はまだしも、記憶喪失は計画してできるものではございませんし、やはり紅天女の試演に影響してしまいます」
「お前に不可能なことはないだろ!とにかく催眠術でもなんでもいいから奴からマヤの記憶をなくさせるんだよ!」
「試演はどうするんです!」
「一真役など武将役のトンベに替わってやってもらえばいいじゃないか!」
「そんな無茶な・・・出来るはずないじゃないですか!」
「ではどうあっても無理か?」
「―無理!です」
「ではシナリオ3でいこう」
**シナリオ3**
―桜小路を男色の道に引きずり込む。
(以下省略)
「・・・真澄様・・・これは確かに可能かも知れません。一度足を踏み入れたら逃れられない世界と聞きますから。ですが、、、誰が相手をするのです?」
「もちろんお前しかいないだろ」
「(OH!NO〜!ムンクの叫び参照)・・・申し訳ありませんが、無理でございます・・・」
「どうしても、と仰るなら、貴方がお相手なさってはいかがでしょうか?舞台は用意させていただきますが」
「俺は男の尻なんぞに興味はない」
「!!私も全くもってございません!!」
「どうあっても・」
「無理でございます!」
「う〜〜ん。ではシナリオ4でいこう」
**シナリオ4**
―桜小路の体重を50キロアップさせる。
**シナリオ5**
―桜小路を兵役へ送り出す。
**シナリオ6**
―桜小路を幼児化さす。
(以下シナリオ10まで省略)
「真澄様・・・申し訳ございませんが、お手伝いできるものがございません・・・」
聖は一応、読む振りだけしてシナリオ10のページまでペラペラめくると、すでに冷たくなった傍らのエリゼのアールグレイ(砂糖たっぷりミルク入り)を一口含む。
「聖。お前俺が可哀想だと思わないのか?その可哀想な俺を助けてやろうとか、救ってやろうとか、そんなやさしい心がお前にはないのか?」
真澄はそんな聖の真向かいで一気にまくし立てライターを取り出しタバコを点けると、足を組み、斜め45度の角度で悠々と白いタバコの煙を細く長くスーッと吐き出す。
真澄が若い頃よく使った、女を落とす時のポーズの一つだ。
しかし、そんなものは聖には通用するはずもなく、あっさり返事が。
「それより、マヤ様に恋人を作る・・と言う案はいかがでしょうか?」
―!!!―
「聖手を出せ!」
「お相手は貴方ですが」というセリフを言う前に真澄の根性焼き予告が入ったので、聖はあわてて別の案を提唱する。
「では、桜小路&舞出来ちゃった結婚案。はいかがでしょう?」
「・・聖・・・お主も悪よのう」
「それでは私はこれで」
いかにも「金輪際さようなら!」と言わんばかりにアールグレイを一気飲みし、真澄のプレゼンは置き去りにしたまま、聖はソファーを立ち猛ダッシュでドアの方へ向かって歩き出した。
「ちょっと待て!」
「まだ何か?」
「あーあれだが、あれ、」
「あれ?」
「携帯のアレだが、修正依頼だ」
「携帯のアレ、とは?」
「決まってるだろ!『速水さん、あたしたちの恋のキューピット聖さんからよ』だ!」
「あの着声がなにか?」
「この『速水さん』がなんで怒ってるんだ?これじゃ俺のこと嫌いみたいじゃないか。『速水さ〜ん』てな甘い声に変更してくれ」
「・・・承知しました・・・」
別荘を出た聖は暫し、高くなってきた波がうねる海を見つめた。
(真澄様、貴方の心はますます深くなっていくようでございます。この聖めも、もうついていくのが限界でございます!)
その心を知ってか知らずか、はたまた慰めたのか嘲笑ったのか、冷たい海風がひゅるりと聖の頬を通り過ぎていった。
―完―
(おまけ)
その後、「桜小路&舞できちゃった結婚」案を実行しようとしていた聖であったが、その度、
「マヤ人形が壊れた 最優先課題」だの
「マヤの携帯データ抜き取り 最優先課題」だの
「紫織のデート服切り裂き 最優先課題」だの
「里美アメリカンギャルの斡旋 最優先課題」だのが横入りするためちっとも進まないのであった。
(結終)
(2006.2.13)
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